便通異常と鍼灸

 
 

1.便通異常とは

 「便通異常」とは、健康の時よりも便の回数が多かったり、少なかったりする、便の形が通常よりも硬い、軟らかい等の状態をいいます。つまり便秘や下痢のことで、便秘と下痢が交互に起こる場合もあります。

 また、排便時の不快感(残便感、腹部のはり感、腹痛、排ガスが多い等)も含まれます。便通異常は、便の回数や量・性状、他の症状などで総合的に判断します。
 

  • 便秘
    ①3〜4日間連続して便が出ない(便の回数が1週間に3回未満)、
    ②1回の便の量が減少する(35g/日以下)、 ③排便に時間がかかる、
    ④便が硬く排便時に痛みがある、 ⑤排便困難を自覚する、 ⑥残便感がある。
     これらの中で、1つでも当てはまれば、便秘と呼びます。たとえば1日2〜3回の排便があっても、排便時に苦痛があれば便秘となります。ただし、個人差があります。便秘は下痢と同様に多くの疾患で起こるため、まずは病院への受診が必要です。

 

  • 下痢
     水分の多い液状の便がでることをいい、何回もトイレに行きます。下痢には急性や慢性があります。急性で下痢が止まらない場合は、感染や疾患が疑われるので、まずは病院への受診が必要です。慢性の下痢は、成人では3週間以上下痢の症状が続く場合をいいます。

 

2.便通異常における鍼灸治療の適応

  便通異常は、原因となる疾患がある場合が多く、医療機関で適切な検査や治療を受ける必要があります。
 
 便通異常が、鍼灸に適応となるのは、特発性便秘(慢性便秘;常習性便秘)、胃腸手術後における胃腸の回復、慢性の機能性下痢(主に過敏性腸症候群など)が対象となります。また潰瘍性大腸炎やクローン病が軽度であれば、鍼灸治療は適応します(ただし難治性の場合もあります)。
 
 原因となる疾患から起こる便秘は、鍼灸治療の不適応です。また急性下痢(感染性下痢や非感染性腸炎など)や慢性下痢の器質性下痢(消化・吸収障害)も鍼灸治療の不適応です。
                          
 便通異常は、西洋医学と東洋医学の視点から診察、治療します。