アトピー性皮膚炎に対する鍼灸治療

 
 

1.アトピー性皮膚炎とは

 アトピー性皮膚炎は「増悪と緩解を繰り返す掻痒(かゆみ)を伴う湿疹を主病変とする皮膚疾患で、患者の多くはアトピー体質である」と定義されています。
 
 アトピー体質とは、血のつながりのある人に気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を持つ人で、血液中にIgE抗体というタンパク質を産生しやすい体質のことです。
 

2.アトピー性皮膚炎の症状

 かゆみを伴う湿疹は、患者の年齢によって違いがあります。乳幼児では頭部や顔面、小児期では頚部や関節の屈曲部、成人では上半身に湿疹がみられます。
 
 また、成人の患者では、皮膚症状ばかりでなく、随伴症状がみられます。肩こり、便秘、冷えのぼせ、生理不順、イライラ感、不眠、などです。
 

3.アトピー性皮膚炎の鍼灸治療

 アトピー性皮膚炎を皮膚症状から4つのタイプに分けます。皮膚が赤く乾燥し、落屑する(粉をふく)タイプ『風熱証』、ジクジクした湿疹のタイプ『風湿証』、黒ずんだ湿疹で冷えるタイプ『風寒証』、かゆみは軽いが肌が白く乾燥しているタイプ『気血両虚証』で、各々のタイプに応じた治療穴(つぼ)を用います。また、先に述べた肩こりなどの全身症状にも治療を行います。 
 

4.鍼灸治療の効果

 私達の研究結果では、約30回の鍼灸治療により、8割の患者さんにかゆみの軽減や湿疹の改善が認められました。また、症状が緩和した患者さんでは血中のIgE抗体値や好酸球数も低下しており、アレルギー体質の改善もうかがわれました。
 
 

江川雅人